2019年09月30日から2019年10月30日にかけて、侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントが実施されていたので提出した。
10月はじめにTwitterを騒がせたアレである
パブコメのページでは以下の資料が提示された。
- 侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントの実施について
- (別紙)質問事項及び回答様式(Excel版)
- (別紙)質問事項及び回答様式(PDF版) ※Excel版が使用できない場合
- (添付1)文化庁当初案 概要説明資料
- (添付2)文化庁当初案 新旧対照表
- (添付3)文化庁当初案の考え方に関する資料(侵害コンテンツのダウンロード違法化)
当初はこの(別紙)質問事項及び回答様式とやらに記載して、chosaku@mext.go.jpに【侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントへの意見】というタイトルで送れ、とあった。
なんだこのアンケート。第1問から回答不能じゃないか。そもそも「両立させた形」なんぞ不可能。前提が成り立たないとの回答選択肢が用意されていない。ナメとんのか?https://t.co/iKvl00B6Hq
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) September 30, 2019
侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント(別紙)質問事項及び回答様式 pic.twitter.com/alUEJqYYn0
我々は常々建設的な提案を出してきた(反対運動ではなく)のだが、このアンケートは、それを第1問で不可能にしている。反対を選ぶと後の項目で建設的意見が排除され、かといって賛成と答えるわけにはいかず、設問の前提が成り立たないと意見を書き込むことも拒否されている。https://t.co/DMvdbzaQpo
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) October 1, 2019
反対を選べばいいとの声があるが、第1問で反対を選んだ回答はそれ以降の回答が無効となるよう作られている。自由記述欄は「『深刻…実効的な対策を講じること』と『国民…を生じさせないこと』の2つの要請のバランスに留意」と注意書きされ、第1問で反対を選んだ回答はこれを無視していることになる。 pic.twitter.com/12gbUNJDlS
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) October 1, 2019
と思ったけど、そもそも著作権法という法令なので行政手続法における意見公募、つまり法令のパブリックコメント対象ではないから法律上は“パブリックコメント”じゃないのか(・_・;)#これはひどい
— アイヴァーン (@Ivarn) October 1, 2019
後に撤回され、自由に文章を投げつけられるようになった。
意見の提出方法について文化庁に確認。e-GovのページにあるExcelをダウンロードしてメール(or郵送)が想定された方法とのこと。ただし、e-Govページ下部にある「意見提出フォームへ」から誤って送った場合も正式な意見として扱うよう要請し、文化庁から正式な意見として扱う旨の回答がありました https://t.co/jfQWfNYPRh
— 山田太郎 ⋈(参議院議員・全国比例) (@yamadataro43) October 2, 2019
そういうわけでパブコメをテキストで投げつけてきた。
その全文を下に掲載する。忙しくて今日まで先延ばしにしてて、今日授業の合間を縫って即席で仕上げた文章なので十分推敲できなかったのがくやしい。
全文
20190930侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント
1.基本的な考え方 (1)「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請を両立させた形で、侵害コンテンツのダウンロード違法化(対象となる著作物を音楽・映像から著作物全般に拡大することをいう。以下同じ。)を行うことについて、どのように考えますか。(後略)
回答不能である。
そもそもダウンロード違法化によって、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」は両立できない。
何故ならば、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」をダウンロード違法化を前提としてなにか対策を行うことが不可能であるからである。
例えばアクセス警告方式が一時期話題に上がったが、これは検閲の禁止(電気通信事業法第3条)および日本国憲法第21条に反する。また技術的には中間者攻撃にあたり、現在広く普及しているHTTPS(TLS)によって不可能である。どうしても行うなら中国が行っているような秘密鍵を当局に提出するしかないが、これはインターネット全般に対する検閲を行う宣言に等しい。こうした課題を無視してもなお、単なる閲覧は違法化され得ないのであり、複製が行われたか閲覧のみに止まったかは、サイト側からもインターネット接続サービス側からも判別不可能である。
したがって質問の設定が誤っており、いかなるダウンロード違法化も許容されない。
今回の法整備の意図は「(添付3)文化庁当初案の考え方に関する資料(侵害コンテンツのダウンロード違法化)」の「音楽・映像分野における違法ダウンロード刑事罰化による抑止効果」に解説のある通り、閲覧は合法だから効果は限定的にも関わらず、それでも効果はゼロじゃないから立法したいという話で合ったはずで、これはそもそも「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせる」ことを意図した立法だったはずであり、自己破綻甚だしい。
「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」は現在もあるアップロードに対する規制やリーチサイト規制(ただし対象を何かしらの方法で明示的にかつ最小限に制限して)を持って行われるべきである。
2.懸念事項及び要件設定 (1)侵害コンテンツのダウンロード違法化を行うことによる懸念事項として(後略)
挙げられている全項目についてとても懸念される
(2)上記の懸念などを踏まえ、具体的にどのような要件・内容とすることが望ましいと考えますか。 (i)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する文化庁当初案(添付1~3参照)について、どのように考えますか。
5 要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない
(vi)(i)で5を選択した場合、その理由を教えて下さい。
上述のとおり「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」は両立できない。
3.その他
(2)リーチサイト対策に関して御意見があれば、記入して下さい。
リーチサイト対策、もう少し言うとリーチサイト運営者に対しては何らかの対策が必要であるが、すべてのリーチサイトを対象とする法整備は事実上WWWで広く行われているハイパーリンクそのものの規制という誰も望まない未来につながるため、範囲を最小限度に絞った規制が必要である。
繰り返しになるがリーチサイト規制はWWWでの活動すべてを規制しかねず、国民生活を根本から破壊できる力を持っている。したがっていかにして客体を最小限に絞るかが肝心になるが、例えば漫画・アニメに限定としても、何をもって漫画・アニメなのかとかということになり、定義が不明瞭になる。しかしリーチサイト規制の条文がそのような曖昧な定義によって行われるのであれば国民生活を破壊しかねない。
現時点では十分に議論が深まっておらず、立法は時期尚早である。
(3)その他、海賊版対策全般に関して御意見があれば、記入して下さい。
2月に直前になって差し戻しになった本法制は影響範囲が極めて膨大であるにも関わらず、技術的可能性や法的安定性について十分に議論されたとは言い難い。今回のパブリックコメントではなにか具体的な法案を示さず前回の資料を使いしているあたり、前回と同様かそれ以上に影響範囲の大きいものを提出する気ではないかと深刻な懸念を示さざるを得ない。今回のパブリックコメントの設問は多重質問の誤謬という悪質な手法が使われており、設問作成者は十分反省するべきである。